1.当座預金はステータス
学校で習った預金の種類は「普通預金」「定期預金」「当座預金」の3つである。めでたく会社の登記が完了すると銀行は預けておいた出資払込金を返してくれる。これが資本金となる。
会計士さんの説明によると、資本金というのはゲンナマ(現金)を指すのではなくて、会社の資産の出所を示すだけのものだそうである。出資払込金を返しても らった直後では、資本金がそっくりそのまま現金に化けたとみなすべきだそうな。これが「貸借対照表」を作成する第1歩であり、小遣い帳と会社の財務諸表の 違いなのである。
余談になるが、貸借対照表では、利益イコール現金とは限らない。この点で、会社経理と日常感覚が大きく異なる。
前置きが長くなってしまったが、話を戻す。出資払込金の保管証明を発行した銀行は、当然のことながら払込金の戻し先として自行への口座の開設を勧める。
深い理由は無かったが、当座預金の開設を聞いてみたら担当者に全く問題外という顔をされてしまった。「当座預金」とは、手形や小切手の決済用の口座で、決済できる代りに利子がつかないというところまでは学校で習った。問題は手形がもてるのかという点であった。
結論を言えば、新米の会社は手形や小切手はもてないのである。しばらくきちんと会社が存続し、利益も出し続けている実績が必要らしい。当座預金の口座を持てるというのは会社の信用の証でありステータスでなのである。
こんなこと学校では教わらなかったぞ。
2.駆け出し会社の資金繰り
前にも触れたが、サラリーマン時代と一番大きく異なる点は毎月現金が入るとは限らない点である。現金が入らない理由はいくつかある。第1に本当に仕事をしていないとき。受注できてなければ、お金に換わる物もサービスも生産していない。
第2に納品は完了したが支払いまでに待たされるとき。日本だけの特徴なのか世界的にそうなのか知らないが、品物やサービスの流れとお金の流れが同期しない。 金額もポケットマネーの範囲でないし、経理処理の時間も考慮すれば、請求翌月に代金が振り込まれるのは、ほぼ同期しているといえるだろう。
手形で 90日や120日などというのは遠慮したい。というよりこちらの体力が持たない。現金化までの期間会社を支えるだけの運転資金(貯金)などあるわけがな い。手形を割り引くといっても、あれは銀行から手形を受け取った人が借金するだけのことである。これといった担保もない出来立ての会社では借金もできない。
営業力もない状態では、知人に頼んで仕事を回してもらうしかなかった。受注レベルでは、孫受けかひ孫受けであったと思う。回してもらえる仕事があったこと自体が幸いだったが、それ以上に、直接の発注元(知人)からこまめに入金してもらえたのはありがたかった。
おかげで(ぎりぎりまで緊縮していたけど)給料の支払いを滞らせることは一度もなかった。創業期におけるこの知人の存在は、運命の巡り合わせかもしれないが本当にラッキーだった。
3.最初の決算
会社を作るには、まず定款を作成しここに決算をいつにするか明記しておかねばならない。定款の作成は、市販の本を見て自分でやってしまったのだが、ここに小さな?失敗があった。
決算日、いわゆるその会社の会計年度の最終日は月末にしておく方がよかったのである。忘れちゃいかんとの思いでカミさんの誕生日(月の途中)にしておいたところいろいろ面倒になってしまった。
決算はその性格上、税務署(国税局+静岡県+浜松市)との連係プレーを強制的に求められる。税金の計算や申告のための用紙が税務署から送られてくるのだが、 決算日が月末になっていないと用紙の送付タイミングずれてしまうらしいのだ。こちらの経理処理にしても、月単位に伝票や領収書の処理(締め)を行っていた ので、決算月だけ途中の日で前後に分けると途端に煩雑になりそうだった。
打つ手はひとつ、決算日を変更するしかない。あわてて社員総会(有限会社だから書面による決議でOK)を開いて決算日を月末に変更した。有限会社の手続きは簡便である。もちろん決算日の変更は税務署+県庁+市役所にも(税理士さんが)届けた。
最初の決算年度は半年にも満たなかったが、経常利益19万円で9万円の法人税+住民税を納めた。とにかく初年度は黒字であった。
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