1.お金を生む業務 vs.そうでない業務
会社を作ったばかりの頃は、実際に仕事をするのは私だけであった。社長で開発担当で営業担当で管理担当であった。会社を運営していくにはどの業務も欠くことができない。ここで大切なのは、外から直接お金を得られる業務は開発だけということである。
週休2日として1ヶ月に20日の労働日がある。この20日をすべてプログラム開発に当てることができれば20日分のアウトプットができて、それに見合うお金がはいってくる。(はず...)
現実はそうならない。営業をしなければ受注ができない。受注がなければ当然アウトプットはゼロである。お金の管理も必要になる。帳簿上はお金(資産)があっ ても銀行口座に現金があるとは限らない。出て行くお金と入ってくるお金のタイミングを常ににらみ、残高(運転資金)が不足しそうなら銀行様とも相談しなけ ればならない。健康保険や厚生年金、税金の計算と支払い手続きも必要である。
丸々20日間お金を生む業務だけを続けることができれば儲かるのにな...
この思いが経営者感覚の目覚めだったかもしれない。
2.会社の効率
法律上は一人でも「会社」を起こせるがこれはあくまでも「法律上の人(法人)」を作ること。本来「会社」というのは二人以上の人が共同で業務を行ってこそ意 味がある。1人と1人が集まると1人の2倍より「大きなこと」ができる、だから会社にするんだというが、これは本当のことだと思った。問題は「大きなこ と」とはいったい何か!ということである。
会社の業務には、直接お金に換わる業務と、そうでない(けど絶対必要な)業務がある。お金に換 わる業務の比率を上げねばならない。どうすればよいか?たどり着いた結論が会社にすればよいということだった。複数の人間が共同で共通の目的に向かって業 務にあたる本来の「会社」である。
10人の会社で、1人が営業、8人が開発、1人が管理業務を行うとするとなんと業務の8割がお金に換わることになる。「大きなこと」とは、さしあたりこのお金への変換効率ではなかろうか。1人のときとは大違いである。
規模の拡大が至上命題とは思わないが、ある程度の人数が集まらないとお金儲けの効率が上がらないなと実感した。
3.採用第1号
実感はしたが、来てもらった人に本当に給料が払えるのか自信はなかった。半年先の自分の給料が払えるかはっきりしないのに従業員の給料なんて...
そんな中で、最初の社員の採用が唐突に決まった。初任給の決定にはあれこれ悩んだ。ちょうどその頃向こう1年間ずっと仕事を出してくれそうなお客様があっ た。月の売上がいくら見込めるから、ここから家賃と経費を引いて残りで社長と社員が給料を得るとすれば...ということで基本給が決まった。これが会社の 避けられない固定費であり、この年度はそれに合わせてぎりぎりの緊縮予算を組んだ。ぎりぎりといっても二人食べていけるだけのお金は回さなければならない ので予算枠そのものは拡大していた。
別のお客様から仕事が入れば、それを当てにしていたわけでないので、その分はそのまま会社の余力になる。採用した彼に運があったのか、それとも一人で頑張っていたときに蒔いた種が実ったのか、いっぱい仕事が入ってしまった。
緊縮の予算枠は1500万円。これだけ受注できれば2人食べていけるとしていたところ実際の売上は4000万円を超えた。このときの内部留保を資本金に回して有限会社から株式会社へ組織変更した。
社員の採用は、支出面の増加だけを考えてしまっていたのだが、収入面の増加だってありうるのだ。収入が支出を上回れば儲けである。これに気がついてまた少し経営者になった。
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