はじめに筆者は、アプリクラフト社が開設しているホームページで「ビギナーのための曲面モデリングセミナー」を連載してきました。本編は、連載された内容を再構成 し要約したものであります。ご興味を持たれた方は是非ホームページ版オリジナルセミナーもご参照ください。(アドレスは参考文献に記載)
CADで作成されるモデルは、大きく分けるとこの3つに分類されます。「ソリッドモデル」「サーフェスモデル」「ワイヤーフレームモデル」です。
ソリッドモデルは、中身の詰まったモデルです。中身があるので体積を求めることができます。サーフェスモデルは、物体表面にたくさんの皮(曲面)を並べた ものです。ワイヤーフレームモデルは物体表面の特徴的な位置(たとえば、稜線や角)に針金(曲線)を並べたものです。人間は、針金細工を見てテレビの筐体 や自動車のボディを想像できますが、工業製品のデザインや加工、性能シミュレーションではほとんど利用できません。
ソリッドモデルもサーフェスモデルも画面で見る限り区別できません。ソリッドモデルもサーフェスモデルも物体表面を表すように、3角形や4角形(多角形) に切り取られた曲面を3次元空間に適当に配置したものだからです。見かけは同じでどこが違うのでしょう?ソリッドモデルでは、ちょうどサッカーボールのよ うに、物体表面を表す曲面がすべて縫い合わされています。全体で1枚の皮になっています。皮の内側と外側を区別することができます。皮の内側に物質が存在 すると約束することができます。
ソリッドモデルを作るツールがソリッドモデラーであります。最終的にソリッド(中身が詰まった)モデルを定義できれば、途中のモデルの状態は問いません。次の3つの手法があります。
図2 (左)左甚五郎の眠り猫 (中)イサムノグチのランプシェード (右)唐山陶人?の食器
Pro/ENGINEERやSolidWorks、SolidEdgeに代表される手法です。 最初に中身の詰まった立体(ソリッド)を定義しておいて、あとはそれをひたすらのみ(彫刻刀)で削ってモデルを作っていきます。のみは削るだけでなく材料 を盛りつけることもできます。のみの使い方は、システムに事前に登録されているパターンに限定されますが、パターン内でモデリングしていくことができれ ば、これは簡単、お手軽、便利です。パターンをフィーチャと呼んでもよいでしょう。
CATIAやUG、ライノセラスに代表される手法です。
針金や竹ひごで全体の骨格を作っておいて、そこに紙や布(サーフェス)を張っていきます。先にサーフェスを作っておくケースもありますが、このときは、後 づけで針金を付け足します。デザイナーが針金の骨格を工夫すれば、自由に形状を作り込んでいくことができます。すべてのサーフェスを縫い合わせるという操 作を行ってソリッドモデルを完成します。
LatticeDesignerに代表される手法です。
塑性変形できる材料の表面を押したり引いたりして形を作っていきます。材料表面あるいは材料表面の近くに3角形や4角形のメッシュがあり、このメッシュを 動かして形状を作り込んでいきます。ぐにゃぐにゃした形状を簡単にデザインできるのでユニークな工業製品への応用が期待されます。
BREP(Boundary Representation)ビーレップと呼びます。
彫刻手法でも張りぼて手法でも最終的に得られた(ソリッド)モデル形状は、BREPで表現されます。難しそうな専門用語ですが、サッカーボールのことで す。たくさんの5角形6角形の端切れ(パッチ)を縫い合わせて風船を作ります。張りぼて手法ではこの操作が直感的です。風船が1枚の皮として空間を内と外 に分けます。つまり風船が、空間を分ける境界なのです。
BREPの詳細は次節で説明します。
図3 サッカーボールも風船も空間を内と外に分ける