BREPでは、位相要素と幾何要素を区別して考えます。位相要素は幾何要素の隣接関係を記述する代理人 です。位相要素によって隣接しているとされた2つの幾何要素は、隙間なく隣接しているはずなのですが、現実にこのような状態を維持するのは極めて困難で す。妥協案として少しだけ離れていたりオーバーラップしている状態を許します。許した距離が「位相維持のためのトレランス:マージトレランス」です。
「位相維持のためのトレランス」を考慮すると、VERTEXは点から球になり、EDGEは線からパイプになり、FACEは曲面からマットレスになります。 位相として隣接しているとされる部分では、「球」と「パイプ」あるいは「マットレス」が必ず交わります。これが「位相と幾何が調和している状態」です。
図21 位相維持のためのトレランスの適用
点、線、面を球、パイプ、マットレスに見立てても位相に反して幾何形状が離れていることになります。位相と幾何が矛盾してしまいます。マージトレランスの「緩い」システムで作成したBREPモデルを「厳しい」システムに読み込むとこの問題を生じます。
マージトレランスより小さな長さのEDGEは、モデル中に存在することができません。点に縮退している ものとみなされます。BREPモデル中のEDGEは、両端に球があることを考えると最低でもマージトレランスの2倍の長さが必要です。マージトレランスの 「厳しい」システムで作成したBREPモデルを「緩い」システムに読み込むとこの問題を生じます。
BREPでは、マージトレランスを大きくすると微小EDGEが存在できなくなり、小さくすると隙間や オーバーラップが検出されます。BREPモデルのデータ交換では、上流のCADから幾何要素、位相要素をそれぞれ下流のCADが受け入れられるよう変換し ていきます。幾何要素、位相要素の変換はそう難しいものではありませんが、位相と幾何の調和を保った変換となると相当奥の深いものになります。
図22 位相と幾何の調和が崩れるケース
7.参考文献 >>